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肉だけじゃない!?正しい手順で旨みが増す魚の熟成

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昨今、ブームの「熟成肉」。一定期間、低温状態で肉を安定的に保存することで、肉の持つ旨み成分が増加したり、肉質が変化させる手法で、各種メディアでも頻繁に取り上げられるなど、話題となっています。

そんな中、「肉で出来るなら、魚でも出来るのでは?」という疑問を持たれた方は少なくないと思います。そんな好奇心旺盛でグルメなあなたに、魚の熟成(エイジングフィッシュ)のイロハについてご紹介したいと思います。

そもそも熟成のメカニズムとは?

一口に「熟成」と表現されていますが、そこには科学的根拠に基づいたプロセスがあります。科学と言っても、生物・化学の分野の話が主となります。この手の話題は苦手!という方も、安全に美味しく熟成された魚(エイジングフィッシュ)を楽しんで頂くためには重要な知識ですので、さわりだけでも理解しておくようにしましょう。

上手に熟成された魚は、刺身でも楽しむことが可能で、生鮮そのままとは違う、独特の味わいは魚好きなら一度は味わってみたい味覚です。

食材となる魚の生体中にはATP(アデノシン三リン酸)という物質が含まれています。ATPは我々人間を始めとした動物の体の中(主に筋肉)にも含まれており、体を動かすための動作(筋肉の収縮等)に必要なエネルギー源となっています。

ATPが旨味成分に変化?!

ATPは死後、生物が持つ自己分解(酵素)作用により、イノシン酸とよばれる有機化合物へと分解・生成されていきます。このイノシン酸こそが「熟成」の一つ目の成果物であり、美味しさが増すと言われる理由となります。

イノシン酸は「グルタミン酸」「グアニル酸」と並ぶ三大うまみ成分であり、カツオ節などにも豊富に含まれており、熟成により身肉に含まれる成分量が増すことで美味しさをより強く味覚する、というのが熟成のメカニズムとなります。

また、肉も魚も構成する成分は同じタンパク質であり、身肉にはATPを含んでいます。熟成によって、ATPがイノシン酸に、加えてタンパク質はアミノ酸に自己分解されて、いずれも旨みを増す要因となることから、肉でも魚でも応用可能なテクニックと言えます。

熟成は食感も変化させる

熟成による成果物のもう一つとして「食感の変化」が挙げられます。一般的に釣り上げられたばかりの新鮮な魚というのは、身が引き締まりプリプリ・コリコリとした食感のイメージに近いと思われます。鮮度の良い刺身などは、歯ごたえのある食感が魅力のひとつではあります。

一方、熟成により前述の旨み成分だけでなく、身質の変化が起こることが知られており、筋繊維の変質によりしっとり・モッチリとした食感を楽しめるようになります。また、うまみ成分の増加により舌にまとわりつくように味覚できるようになり、刺身では一味も二味も異なる食材となります。熟成前後でどちらが良い悪いと一概に比較するものはありませんが、同じ食材でも異なる楽しみ方のバリエーションを増やしてくれるのが熟成の魅力です。

熟成のための手順

ここまで魚の熟成についてメリット・魅力をご紹介してきましたが、ここからは具体的な熟成の仕方をご紹介します。特に魚の熟成には、適正な管理と食材の状況の見極めが不可欠ですので、ご注意下さい。

雑菌に注意して美味しい熟成の作り方

オーソドックスな方法としては、冷蔵庫などで温度・湿度を管理しながら魚の熟成を進めていきます。
1.まず、ウロコやエラ、内蔵・血合いなどを可能な限り綺麗に取り除く下処理をすることで、余計な雑菌の増殖を抑えます
2.さらに、表面の余分な水分を丁寧に拭き取り、キッチンペーパーで覆い、0℃以上の直接冷風が当たらない場所で保管します。
3.保管温度が高い程、熟成は進み易くなりますが、それだけ雑菌の繁殖(腐敗)が進むリスクも高くなります。また、食品中・表面の水分量の過剰も腐敗リスクを高めますが、乾燥は味や食感を損なう原因となるので、状態を見極めながらの温度・湿度(水分量)・さらに時間の管理が熟成の成功可否に大きく関わっています。
4.熟成の時間については、食材の大きさや熟成前の鮮度、下処理の正確性、保管条件により変わってくるため一概には言えませんが、適正に処理を施した鮮度の良いもので一般的に冷蔵庫で3日以上で熟成の効果が出てくるとされています。

なお、熟成とは「時間を経て食材にプラスの効果を与える」ものと定義されるため、腐敗させてしまうと最早熟成とは呼べなくなってしまいます。熟成中は匂いや表面の様子を注意深く観察し、異変があった場合は食中毒等の恐れがあるので、食べずに廃棄するようにしましょう。異変がないように見えても、品質に自信が持てない場合には、加熱調理を心がけるなど、熟成には慎重な判断が求められることを覚えておいて下さい。

必要・オススメな道具

熟成に必要な道具としては、通常の魚の調理に使用する器具をはじめ、熟成中に表面をくるむためのキッチンペーパーが必要となります。なお、キッチンペーパーも熟成期間中、毎日新しいものに取り替えるようにすると、雑菌の繁殖を抑制することに繋がります。

また、食材の水分量のコントロールのために、食品用の脱水シート(ピチットシートなど)をキッチンペーパーの代わりに使えば、ドリップ(食品由来の余分な水分)を吸収し、臭み等を抑えてくれるので大変便利です。長期に渡り熟成をする場合は、是非このようなシートを使用して頂き、様子を見ながら適宜交換されることをオススメします。

また、熟成する際のひと手間として、「塩」をあらかじめ全体に降っておいて、魚の水分を出しておくと効果的です。ただし、あまり塩を使用しすぎると「熟成」でなく「塩蔵」に近くなり主旨が変わってしまうので注意して下さい(塩抜きすると、熟成による旨みの変化が台無しになってしまいます)。

熟成する際の注意点・ポイント

何度も挙げてしまいますが、熟成には雑菌数のコントロールが最大の難関となり、食中毒等のリスクもつきまとってきます。ゆえに正しい知識と魚の状態を見極める自信がない方にはオススメ出来ません。最近では飲食店などでも提供するお店が増えているため、そちらで召し上がってみることも選択肢かもしれません。

それでも、是非ご自身でチャレンジしてみたいという方々には、次のポイントを注意して頂きたいと思います。

1.新鮮な魚を使用する

魚自体は死後、腐敗に向かって品質が落ちていくものです。漁獲されてから鮮度管理されて流通されていれば腐敗のリスクは低くなるので、出来ればそのような魚を熟成に使用したいものです。

さらに欲を言えば、水揚げ後すぐに活〆や神経〆された魚であれば、水揚げ後から息絶えるまでに暴れて、身に蓄えたATPを消費することなく熟成に迎えるので、より効果が期待されます。

2.熟成工程は様子を見ながら少しづつ

時間を掛ければ熟成が進みますが、それだけ腐敗のリスクも高まります。その分岐点を見極めるのは素人には難しいので、まずは短い熟成期間からスタートし、実食してみて問題ないようであれば、さらに期間を延ばしてみるといった段階的な実践をオススメしたいです。

3.食べないことも大事

異変を感じたら、食べないことも勇気です。特に青魚などには、細菌増殖に伴い「ヒスタミン」というアレルギー物質が産生され、加熱調理でも無毒化されず、腹痛や嘔吐・発疹等の重篤症例も報告されているため、注意が必要です。

まとめ

このように、魚の熟成「エイジングフィッシュ」についてご紹介しましたが、美味しさが増すというメリットと、品質劣化リスクといったデメリットが表裏一体・紙一重であることが分かって頂けたと思います。

ただし、手順を守って・慎重に行えば家庭でも熟成も不可能ではなく、危険と隣り合わせといったスリルが、熟成による美味しさを引き立たせててすらいるように思えます(特に刺身はドキドキします)。

万が一、失敗してしまうと、本来食べれた食材を無駄にしてしまうことにもなりますので、是非、ご自身で少しづつ試行錯誤してコツを掴み、様々な魚種を美味しく熟成してみて頂きたいと思います。

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